歯周病治療

歯周病とは

歯周病とは、歯周組織に発生する疾患の総称のことです。主な症状は歯肉炎と歯周炎から成っていて、一般的に歯周病と患者さんがお考えになられている病気のほとんどが、歯周組織の炎症である歯周炎という病気です。

歯周病とは

細菌(プラーク)により歯の周りの組織(歯周組織)に炎症が起こります。また、歯石ができると、歯石がプラークを取れにくくしてしまうため、ご自分の歯磨きだけではプラークを除去しきれなくなってきます。

初期には、歯肉に限局した表面上の炎症(歯肉炎)が起こりますが、放置すると歯を支える骨を含む歯周組織が破壊される歯周炎へと移行します。歯周炎が進行すると、歯槽骨(歯を支えている骨)が喪失し、歯が揺れてしまい咬めなくなったり、歯が抜けてしまうこともあります。35歳以上の成人の約8割が歯周炎にかかっていて、歯周炎は成人が歯を失う最大の原因となっています。

早期発見・治療、定期健診がカギ

歯周炎が進行しているほとんどの期間は、慢性期であるため、ほとんど症状がありません。気が付かないうちに進行してしまいます。しかも、破壊された歯周組織をもとに戻すことはほぼ不可能です。歯周組織再生療法は一定の成果をあげていますが、適応症が限られております。だからこそ、早期発見・早期治療により、炎症をコントロールし、進行を食い止める必要があるのです。

歯周炎は再発リスクの高い疾患です。歯周炎に罹患した後に、炎症をコントロールし続けるためには、定期検診が欠かせません。2008年JCPという世界を代表する歯周病学の論文雑誌で、Eickholzらは定期健診(定期的なクリーニングを含む)を行なわなかった患者は、定期健診に来院していた患者よりも、約10年間の調査期間に歯を喪失するリスクが3.17倍高かったことを報告しています。

当院の専門プログラムで、歯周病の進行・再発をブロック

当院では、歯周病専門医と共に治療を行い、その後のメンテナンスまで、専門的なプログラムにて対応いたします。下記のチェックリストに当てはまる方は、当院へご相談ください。


  • ブラッシング時、歯肉から出血しますか?
  • 歯肉が赤く・腫れている感じがしますか?
  • 歯がグラグラ揺れている感じがしますか?
  • 口臭が気になりますか?
  • 朝起きた時に口の中がネバネバしますか?
  • 歯ぎしりを指摘されたことがありますか?
  • 糖尿病に罹患していますか?
  • 現在、妊娠していますか?
  • タバコを吸われますか?
歯周病Q&A

歯周病について、詳しいことをお知りに成りたい方は右記のバナーから日本歯周病学会のウェブサイトをご参考にご覧ください。

歯周病の治療の流れ

充分なご説明とご相談により、治療計画を立案いたします。その後の治療の流れは下のようになります。

初期治療

初期治療においては、虫歯治療、根管治療、抜歯(患者様がご希望の場合)のほかに以下の様な治療の中で必要な治療を行い、歯を保存することができる様に最大限努めます。


◆ TBI(歯磨き指導)

◆ Sc・PMTC(歯の表面上のクリーニング)

◆ SRP(歯周ポケット内のクリーニング)

◆ 抜歯(患者様がご希望されれば抜歯をする場合もございます)、虫歯治療、根管治療

◆ プロビジョナル・レストレーション(仮歯を作り、咬み合わせや審美性を維持したり確認したりします)

再評価・修正治療計画

歯周ポケットを再検査して今までの治療計画を見直し、治療計画のご相談をいたします。

(初期治療後の歯周組織の反応は様々な原因で良かったり悪かったりします。
初期治療が終わった段階で、追加的な治療が必要かどうかなど、改めて評価いたします。)

歯周小手術

歯周小手術を行うメリットがあると判断した際には、修正治療計画の際に再度ご相談いたします。患者様がご希望された場合には、専門的な歯周小手術にて、さらに踏み込んで歯周炎をコントロールするよう努めます。

インプラント治療・矯正治療

インプラント治療や、矯正治療を希望される方は、歯周炎の炎症のコントロールを充分に行ってから、インプラント治療・矯正治療を行います。歯肉に炎症が残ったままですと、インプラント治療・矯正治療にリスクが伴うからです。
インプラント治療・矯正治療を行うためには、歯周病をしっかりコントロールすることが必要です。

補綴治療

被せ物・義歯・インプラントの被せ物など、最終的な補綴治療(かめるようにする治療)を行います。それまでの間は、仮歯を入れて、咬み合わせを維持するようにしていますが、強度の強い材料や審美的な材料に置き換えます。

定期検診

歯周病は再発リスクの高い疾患です。歯周病治療により炎症が収まっても、放置すると炎症が再発してしまうことがあります。大事なのは、炎症のない状態を「維持」すること、すなわち炎症をコントロールし続けることです。

炎症をコントロールされた状態に維持するためには、定期的な診査・クリーニングが非常に有効であることが数々の報告から明らかにされています。定期健診では歯周ポケット測定、歯磨き指導、歯石除去・クリーニング、咬み合わせの確認などを行います。

歯周病治療の効果

初期治療で行う、TBI(歯磨き指導)、Sc・PMTC(歯の表面上のクリーニング)、SRP(歯周ポケット内のクリーニング)によって、以下のような治療効果が見込めます。

 4,5mmの歯周ポケット → 平均1mm程度減少
 6mm以上の歯周ポケット → 平均2mm程度減少

さまざまな因子によって、もっと歯周ポケットが減少したり、それほど減少しなかったりすることが有りますので、結果は再評価の時に歯周ポケットなどをもう一度確認することが必要です。



歯周小手術でさらに改善を

初期治療で炎症のコントロールを行い、再評価にて歯周ポケットなどの改善状況を確認します。その際に、必要な部位にはご希望に応じて歯周小手術を行います。
歯周小手術では、歯の根を直接目で見てクリーニングを行なったり、患者様のご希望があれば再生療法を行なって、失った歯周組織を再生するようにします。虫歯治療をする時と同じような麻酔にて行いますので、術中に痛みを感じることはほとんど有りません。長い目で見れば、しっかりと炎症をコントロールするには有効な場合が多くありますので、再評価の時にどのようにして歯周組織の炎症をよりコントロールするべきか、充分な検討が必要になります。

また、歯周小手術の目的には、清掃・再生・形成外科があり、それぞれの目的に合わせた術式を採用して歯を長持ちさせたり、審美的な改善をします。

歯周組織再生療法で、難症例の方にも治療の可能性

骨移植

歯周炎によって、歯を支えている骨が失われたところに、代わりの骨を移植する小手術です。GTR法やエムドゲインと共に用いる事があります。

自家骨移植

ご自身のお口の中から歯を支えていない骨を採取し、歯周組織に移植します。大変古くからされている方法で、移植をするにはゴールデンスタンダードですが、お口の中から採取しなくてはならないという欠点があります。

移植材(異種骨移植・人工骨移植)

多種多様な骨移植材がありますが、日本国の厚生労働省の認可が下りている移植材を用います。自家骨移植より費用がかかりますが、骨を採取する必要がなく、処置時間・侵襲が小さくて済むというメリットが有ります。

GTR法

歯周組織がなくなってしまったところをお掃除をして、その後に膜を用いて粘膜を遮断し、再生してほしい組織を誘導します。再生療法の1つであるGTR法は、1976年に原理が発明され、1980年に臨床応用が開始されてから30年もの歴史があります。現在は、痛みや腫れが生じにくいエムドゲインの登場によりGTR法の使用頻度は減少しています。

エムドゲイン

発生の過程で歯周組織が出来上がるときに必要な因子(エナメルマトリックス蛋白)を含むエムドゲインというお薬を用いて、歯周組織の再生を促します。1990年代から盛んに行われている方法で、その有効性が世界的に認められています。

エムドゲインによる再生療法の症例

根分岐部病変

歯周炎が進行すると、歯周組織が喪失してしまいます。奥歯は、歯の根が複数に分かれている場合がほとんどですが、その根の別れ際まで歯周組織の破壊が進むと、歯の根の分岐部(分かれている部分)にまで細菌感染を起こします。こういった部位は、歯科医師や歯科衛生士がどれだけ頑張っても、原因であるプラーク・歯石を完全に除去することが難しいことが報告されています。
治療計画を立案するときに、どのように対処するか、専門的な視点からご相談をいたします。

歯周補綴治療

歯周炎に罹患すると、最終的には歯を支える骨がなくなってしまいます。それにより、通常の咬み合わる力ですら歯周組織が耐えられなくなり、「噛むと痛い」「歯が動いてしまう」などの症状が出てくることが有ります。一つ一つの歯では負担過重になってしまう場合、補綴物で連結固定などして、咬み合わせの力に対して抵抗し、咬めるようにするのが歯周補綴という治療方法をとります。

現在では、インプラント治療が発展してきており、インプラントにより残っている歯へのかみ合わせの負担を軽減するなど、治療方法の選択は増えてきております。治療計画により、トータルでお口の中を管理するオプションの一つに、この歯周補綴治療が挙げられます。

インプラント治療と歯周補綴治療の併用症例

歯周矯正治療

歯周炎に罹患した歯でも、充分に炎症をコントロールした後に矯正治療を行うことができます。目的は、咬み合わせを良くして奥歯の負担を軽減したり、審美的にしたり、歯周組織の形態を変えることなどです。

歯周組織の形態を変えることにより、歯周ポケットを減らしたり、歯並びだけではなく歯茎の位置を動かして審美的な被せ物を入れやすくするなど、さまざまな効果を生むことができるケースがあります。ただ単に、歯を綺麗に並べるだけでなく、歯周組織のために矯正治療を応用することは、歯周病学の専門分野の一つです。

その他の歯周病学専門分野

根面被覆術(Root Coverage)

歯肉が下がって根が露出してまうことにより、歯が長くなって気になってしまったり、冷たいものが凍みてしまう知覚過敏などの問題が起こることがあります。そのようなことでお悩みの患者様の露出してしまった歯の根を、歯肉で覆ってあげる治療方法です。歯周小手術の中では最も難易度の高い処置ですが、専門的に症例を見極める、ハイレベルなテクニックを用いることで予知性の高い治療効果を期待できます。

根面被覆術の症例

歯槽堤増大術(Lidge Augmentation)

残念ながら歯を失うと、その部分の歯茎は必ず萎縮してしまいます。その結果、その後に歯を作ろうとしても長い歯になってしまったり、歯茎が凹んだままになっていることが気になってしまう事があります。歯槽堤増大術は、萎縮してしまった歯茎をもう一度膨らませる治療で、歯周病学の専門分野の一つです。

歯槽堤増大術の症例

歯冠長延長術(Crown Lengthning Procedure)

臨床的に歯の長さを長くする治療方法です。歯の長さを長くする目的は大きく分けて2つあります。

歯の根が割れにくくなる

虫歯などにより歯が短くなり、長持ちするような状態で差し歯にすることが困難な場合、土台を築造し、被せ物をするときには、歯肉の上に健全な歯質が1〜2mm以上残っていることが長持ちする秘訣です。歯肉の上に出ている歯質を被せ物が直接覆うことで、帯冠効果(フェルールエフェクト)が得られ、歯の根が割れにくくなります。また、正確な型取りがしやすくなるために、被せ物の適合精度も高くなります。

しかし、歯茎を減らして埋もれている歯を外に出してあげると、前歯では審美的な問題が起こります。そこで、そのような問題が起こらないように、事前に小さな矯正治療を行い、その後に歯肉を調整して歯肉上に歯の根を出すことで、理想的な状態で被せ物を行い、審美的にも調和のとれた歯をつくることができます。機能的な要件を満たしつつも、審美的な要件を満たすように治療するには、歯周組織について熟知している必要があるのです。

歯冠長延長術の症例

(主訴)前歯から臭いがする。
(所見)歯が歯茎に埋もれている状態で被せ物がされており、うまく型取りができなかった部分に隙間が開いていました。



まず、矯正治療により埋もれている歯を牽引していきます。




歯肉が不揃いなため、歯肉の形態を歯周小手術にて整えます。


埋もれていた歯が出ており、出ている部分を被せ物が覆います。歯肉の形態も左右揃いました。
仮歯にて歯肉が収まるのを待ちます。

機能性・審美性を共に満たした状態となりました。この後に、被せ物をしていきます。

審美的な改善を図る

「笑った時に歯茎が見えてしまうのが気になる」「前歯の長さが揃っていなくて気になる」という方が対象です。

一般的に、ガミースマイル(Gummy Smile)と言われる状態(笑った時に歯肉がたくさん露出してしまう)は、歯茎が3mm以上見えてしまう状態のことを言います。審美的なことは、ご本人が満足されていれば問題有りませんが、気にされている方は修正が可能です。また、歯の長さが不揃いな場合、どんなにきれいな被せ物をしても美しくなりません。額縁が整っていなければ、どんなにきれいな絵を飾っても、美しい絵にはなりません。

短い歯を長くするのか…あるいは、長い歯を短くするのか…。お口の中だけではなく、顔貌や唇の形態などの充分な診査・診断により、ご相談させていただきます。

歯冠長延長術の症例

GBR法

GBR法とは、歯が欠損している部分に特殊な膜を用いて粘膜の下にスペースを確保し、骨を作る治療方法です。主に、インプラントを行う際に骨が足りない時に行いますが、実は、歯周病学分野の専門的な再生療法であるGTR法を応用した治療方法です。

上顎洞挙上術

上顎洞とは鼻腔の一種で、上の奥歯の根の先の部分にある空洞のことです。この部分には骨が無いために、インプラントをする際には骨をつくらなくてはならないことがあります。その際に行われるのが上顎洞挙上術です。